Wallis キャスト
センターピンのキャスティングで、もっとも独特でもっとも難しいキャスティング。ラインを一瞬で引くことで スプールを回し、ラインをフリーに出ていかせながらバックハンドで投げるというキャスティング。飛距離、ラインの撚れのなさではこのキャスティングに勝るものはないと言われるが、バックラッシュの危険を常にはらむキャスティングでもある。
しかし、センターピンでのキャスティングの世界に足を踏み入れると誰もが習得したくなる華麗なキャスティングであり、 ここではこのキャスティングについて少し詳しく解説したい。
なお、このキャスティングを行う場合は必ず、リールの糸巻き量は最大糸巻き量の半分以下、出来れば4分の1くらいにしておくとバックラッシュの危険性が少なくなる。
Wallis Cast 事始め
wallisキャストは、常にバックラッシュと飛距離の折衷案を探すことにより成り立っている部分が大きい。何はともあれ、その方法論を解説しよう。なお、右利きを仮定して話を進める。 また、wallisキャストの方法論に関しては、スイング投法の流派が様々にあるように、人によってやり方は相当に異なるし、北米と英国でもその方法は異なってくる。ここで紹介するのもそのうちの一つであり、これにあらずんばwallisキャストにあらず、というわけではないことを留意いただきたい。これから紹介するスタイルは、サイドキャスト方式で振りの面が地面と平行になり分かり易い為、まずwallis castの構造を理解するのに適していると考える。また、振り幅が大きい為、比較的重めのウキや仕掛けでは遠投性に優れている。
まず、スタンスだが、左90度に向かって立つ。足からきちんと左90度を向かせておくこと。 腰だけで左を向いていてもどうしても右へ引っ掛けやすくなるし、きちんとしたキャストが出来にくい。
次に、垂らしであるが、重心となるものがリールより少し上くらいの長めのタラシがやりやすい。 あるいは針がリールの下程度、と考えても良い。 遊動ウキの場合は、ウキがその重心となるだろう。固定ウキの場合、ウキを重心とするのは 長すぎるたらしを生むので、オモリをメインに考えることになるだろう。 シャツボタンスタイルの錘打ちならば、あまり考えずに針の位置で決定すればよい。 錘が或る程度、合計で5g程度以上あるならば、ウキが穂先近くになってもかまわない。 極小ガンダマ数個といった軽量仕掛けの場合は、或る程度ウキの重量に頼らざるを得ないので、 ウキの位置がそれなりに重要になってくる。
なお、タラシが長いと、それだけ後方から十分な振り幅を取って投げないと右へ引っ掛ける 結果になりやすい。逆に短めだと、小さな振り幅でまっすぐ投げられるが、最大飛距離は 減少する。その場のスペースなどに応じ、対応すると良い。
さて、まずは左斜め後方、つまり、左マイナス145度辺りでスイング投法のように 少し振り子でもして(要は浮けば何でも良い)、軽く仕掛けを浮かせてやる。 そして、ロッドを地面と平行の状態にしたうえで、キャストする。 (もちろん、スムースにキャストに移行しないと浮かせた仕掛けが地面に落ちてしまうので注意)
●ここで、リールは必ず地面と水平に寝かせてやる状態を作り出す。これは極めて重要である。 これがきちんとできていないと、後にスプールが回転した時、ラインがこぼれ落ちてハンドルに巻きついたりバックラッシュしたりするし、そもそも最もスムースに回転するのはリールが水平に寝ている状態である。
●左手は手の甲を上、指先を真下にした状態で親指以外の4本の指をそろえてまっすぐにしておく。 親指は人差し指に付けておく。 ラインは、4本の指付け根の少し上あたりの「壁」でラインを引く、即ちプルをする。決して関節ではさんだりはしない。 左手の壁はラインを保持するということは決してないのだ。
●そして、プルを行う時も、例え軽量仕掛けであっても「突き放すように」勢いをつけてプルをすること。 イメージとしては、ラインに出来るだけ触れる時間を少なくするようにしながら後方へ突き放しプルをするイメージ。 べったりとプルをすると、ラインが手にまとわり、絡まりやすくなる。そして、当然のことだが、いざ投げてフォロースルーのときに関節にラインがくっついてしまうと、バックラッシュの原因になる。
右手は薬指がスプール左側のエッジに触れてブレーキを利かせている状態。人差し指と親指でグリップを ホールドしている。小指はスプール右側のスプールガードにのせておけば良い。あまりしっかりリールを ホールドすると薬指の動きが鈍くなるので、基本は親指と人差し指の輪っかホールドをメインに、 柔軟な薬指ブレーキを効かせられるようにしておく。
●いよいよキャストだが、これは左手のプル(ラインを引っ張り出す行為)と、右手のバックハンド の絶妙のタイミングによる共同作業といってよい。この2つは限りなく同時に行う。
●そしてこの時は、完全に右手のブレーキは離し、スプールはフリーにしておく。 ここで怖くなってフェザリングしていると、あたかも「乗った」キャストのように錯覚するが、 これは回転の悪いスプール状態と出の悪いラインの抵抗の証である。 きちんとフリーにしていれば、投げる時非常に軽く感じられるだろう。そもそも、軽量な仕掛けで「乗り」を感じるほどロッドを曲げることは難しいので、これでいいのである。
ただし、プルはかなりしっかり行う必要はある。イメージとしては、完全にフリーになったスプール状態で、 ロッドに乗せるにはラインプルの抵抗頼みだ、という気持である。 しっかりプルをし、同時にきちんとインパクトをつけたバックハンドの振りを忘れないように。 ともすればプルに気を取られ、バックハンドがぬーとした緩い振りになるが、いわゆるルアーキャスティングなどと 同じように、シュッとこぎみよくキャストするようにしよう。
●特に注意したいのは、バックハンドのインパクトは必ず振り始め、自分の体の真横辺りであるべきで、これがぬーっとした インパクトのない振りになると右に引っ掛けてしまい距離も伸びない。 きちんとインパクトを早めにかけて投げれば、あたかもスピニングリールで投げているかのように軽やかに飛んでくれることだろう(それでも飛距離では到底及ばないが)。
なお、投射角は、やや上方、20度から30度を狙えば遠距離向きであるが、通常は水平~やや上程度で いいだろう。
そのあとは速やかに上体を前へ向けてフォロースルーする。 このフォロースルーの最中も、スプールを完全にフリーにしておくことが飛距離を伸ばす秘訣だ。 つまり、薬指のフェザリングを行わないということだ。
●ただし、やはり軽いウキと仕掛けの場合は、多少のフェザリングをしておかないとバックラッシュすることになる。 逆風時も同様だ。
そしてこのフォロースルー段階で本当に重要なのは、プルした左手で、ラインをガイドすることである。 ●親指と人差し指で作る輪へ左手を変化させながら、ラインが暴れないように、リールに巻きついたりしないよう 注意し、徐々に元ガイド~リールの間のあたり(ただしリールよりも外側をキープして或る程度角度を保つ)へと近づけていく。これをしっかりしておかない と、リール内のラインが緩み、薬指などに絡まったりする。 ラインをリールから少し離してやりながらテンションを保つイメージである。 最後まで左手はラインに多少なりともテンションを与えておくことが大切なのだ。これは、多少の飛距離を 減じることは否めないが、重大なバックラッシュ予防として不可欠だ。 特に、軽量仕掛けの場合は意識して左手とリールの角度を作り、ラインテンションを与えておくといいだろう。
このラインガイディングの最中に気をつけるべきは、ラインが4本の指の関節や親指と人差し指の間に少しでも挟まると バックラッシュをおこすことである。輪っかになった時点ではラインは人差し指の第一関節あたりを かすりながら出ていくくらいが理想的だ。 なお、左手を輪に変化させながらガイドして行く時、中指以下3本の指は崩して完全に親指と人差し指だけの輪にするか、 元の形を或る程度維持しながらの輪にするかは、好みで良い。 前者は3本の指へのライン絡まりを防げるが、ラインの滑り、手の動きの自然さは後者が勝るだろう。 話が少し逆戻りするが、 手が汗などで湿っていたり、汚れていてラインがべとつく状態では、最初の4本指のプルの段階でラインがくっつき バックラッシュの元になる場合もある。故に4本指の状態では指は曲げずに関節のくぼみを作らないことがポイント である。4本指の間もぴったりにしておくのも、ラインの絡まりを防ぐためだ。無論、関節ではさんでプルする等はよりリスキーであり、すべきではないのは先述の通り。
最後の段階、仕掛けが着水するステージ。ここではもちろん例外なく、スプールの回転を薬指で止めること。 できれば着水寸前に止めると良い。
まとめると、重要なポイントは以下のようになる。
1.リールは必ず水平に
2.左90度を向き、スプール完全フリーでしっかりプルと同時にインパクトあるバックハンド
(両者の力は50対50.プルが勝つとバックラッシュ、バックハンドが勝つと飛ばない)
3.丁寧にラインをガイディングし、ラインがスムーズに流れるようにする