センターピン・カープフィッシング
英国でのセンターピンリールを用いた流し釣り、トロッティングに於いて、主要なターゲットの一つが鯉である。 もっとも、通常狙われるのは中~小型のものが多いのだが、それは、かの地でのトロッティングがそもそもライトタックルで愉しむのが常道であるという文化的 側面が理由として強く、決してセンターピンリールで大型の鯉が釣れないわけではない。柔軟な人力ドラグによって大型魚をしとめることが出来るのはカナダな どでのスチールヘッド釣りにおいて証明されているし、特にオープンスペースでは意のままのやりとりを行えるこの釣りはスピニングリールを用いたボイリーや フィーダーフィッシングなどよりもはるかにゲーム性の高い釣り方と言えよう。
センターピンリールでのトロッティングでメーター級に近いような鯉を狙うというのは本場英国に於いてもあまり一般的ではないが、ロッドとラインをそれなりのものを使えば十分に可能である。ただし、オープンスペースで時間をかけて魚を弱らせることが出来るような釣り場である必要がある。一気に障害物 に走られるような、短期決戦を強いられる場所では人力ドラグは力足らずになる場合が多い。70~80cm程度の準大型は、オープンスペースであれば通常の ライトなトロッティング用ロッドでも上げることが出来る。もちろん、中小型の数釣りも楽しい。ここでは、鯉にターゲットを絞って、センターピンフィッシン グの実際について詳しく見ていこう。

ロッドの選択
まずはロッドであるが、必ずセンターピンリールの釣りに最適な、「フロートロッド」あるいは「マッチロッド」と呼ばれる類のロッドを選択したい。 これらのロッドは小さなガイドが多めについており、概して軟調子である点が磯竿に少し似ている。ガイドの特徴は遠投性能を重視せずにガイド間の糸ふけを防 ぐ意味合い、軟調子なのは食い込みを良くするとともに非常に柔軟な対応が出来る人力ドラグを背景に、硬調子で一気に抜き上げるような釣り方がそもそもあま り必要でないことが理由としてある。
フロートロッドにも色々なキャスティングウェイトのものがあるが、70cm程度迄の鯉であれば、主流である20g程度迄のキャスティングウェイトで 十分だ。 より大型まで視野に入れたい場合はヘビータイプのフロートロッドが良い。POLE&LINE フロータニア14ftは、90cmクラスの大物にも対応できるポテンシャルを持ったスーパーフロートロッドだ。特に障害物が多く強引なやりとりが想定される場合は、このようなロッドを選択すべきだろう。
リールの選択
センターピンリールであれば基本的にはどのようなものでも良いが、太めのラインを使うのでスプール幅はワイドなものが良い。また、スプール径も最低4インチ以上のものを選ぶようにしたい。北米スタイルのOKUMA社 シェフィールドなどのセンターピンも適している。
ラインの選択
これはロッドとの兼ね合い、自身の指の力(人力ドラグの力)、そして釣り場の障害物の有無で大きく異なってくる。 通常、70cm程度迄を想定した比較的オープンな釣り場なら8lb程度でいいだろう。素材はフローティングのナイロンで良い。 PEでも良いがバックラッシュ時はやや不便だ。フロロは沈みやすく不向きである。 さらなる大型までを視野に入れる場合は釣り人の腕によってラインを臨機応変に決定すべきだろう。あまりに太いラインは流し釣りには向かないので、例えば 30lbのようなラインを用いるならばPEにした方が良い。 ただ、この釣りは、大型クラス狙いとしては基本的にはオープンスペースでじっくりと時間をかけてやりとりを楽しみながら釣り上げるというスタイルになる。 太糸で一気に勝負をかけるような釣り方では人力ドラグは不向きであり、パワーのある両軸や大型スピニングの出番となってしまう。

餌について
センターピンリールでの流し釣りで鯉を狙うには、もっとも適した餌はパンである。 英国でもパンはしばしば用いられる「正当派」の餌であるが、日本ではどちらかというと単体で浮かせて流すパン鯉が一般的だろう。この釣りではパンは浮き仕掛けにつけて沈めて流す。普通の付け餌となんら変わりはない扱いである。 パンは必ず身の部分を使い、耳は用いない。耳の部分は浮力が大きくバラケやすいからだ。針に挿した部分だけ指で押しつぶし、適度な沈下力を得るようにす る。なお、ロングトロッティングを行う場合は流して行く途中で餌が外れてしまう恐れがあるがこれを察知することは困難である。よって保険としてイミテーションベイト、とりわけタイガーナッツやコーンの類をヘアリグで併せてセットしておくのがお勧めである。
仕掛けについて
仕掛けそのものは英国式トロッティングの王道を行くような、極めてオーソドックスなもので良い。大型狙いには針まで直結のラインシステムが最も効率的だが、ハリス接続部分があっても強度さえ保てばなんら問題はない。 ショッティング(錘の打ち方)についてはこちらを 参考にされたい。水流等で選択肢は色々に変化しようが、基本的に底をゆっくりと這うように流していくので、タナはやや余り気味に深めに設定しておく。場合にもよるが、底から離れて流れているような餌には警戒的である。通常の鯉釣りにおいて想定される、下流域でのゆるやかな流れでの釣りならば、図のような 「止め釣り打ち」でのウキ先行の流しが最も効果的だろう(詳しくはこちらを参照)
ウキ
基本的に流れは穏やかな場所で釣ることになるだろうから、avonやbobber、あるいはstickといったウキが最適。 大物狙いで仕掛け重量が大きくなる場合は浮力の大きな前2者、中小型狙いのライトな仕掛けならば後者がお勧め。 大物狙いなら深場にも対応できる中通し・ゴム管固定兼用のBoeCen C10フロートが最適だ。緩い流れで完全にフリーで流していきたい場合はwagglerを選択するのも良いだろう。(トロッティングでのウキ選びを参照)
錘
通常のガンダマで構わない。まとめ打ちをする場合、ガンダマの連打ちが面倒ならば1号程度の中通し錘を用いるのも良い。他にもBoeCen本流スティックシンカーはガンダマのまとめ打ちでは流れに負けてしまう大河川や流れのある釣り場で引き摺り流しを行うのに最適だ。C10フロートとの相性も抜群。
針
これは狙う鯉のサイズによって臨機応変に対応するが、一般的な鯉針やチヌ針で構わない。