フロートフィッシングタックルでのウキフカセ釣り
ウキフカセでフロートフィッシングタックルを用いるということ
日本の磯釣りといえばウキフカセ、主にメジナやクロダイをコマセを撒きながら狙う釣りが有名だ。この釣りはおそらくあまたある釣りの中でもとりわけ愛好者が多く既に相当の進化、深化を遂げてきているのは言うまでもない。
各メーカーから販売されている多くの磯竿はこの釣りに特化したもので、レバーブレーキリール等もこの釣りを起点として誕生した(現在はシーバスゲームなどにも用いられるようだが)。
そんな既に完成されたともいえるウキフカセ釣りに、フロートフィッシングタックルを用いるとどのような利点、欠点があるのか。

フロートロッドのメリット、デメリット
一概にフロートロッドといっても、北米スタイル、ヨーロッパマッチフィッシングスタイル、そしてフロータニアのような第三のスタイルの3つがある。
いずれも共通しているのは、レングスが3.6m~長くとも4.5mと短めなこと。磯でのウキフカセを考えるならば最低ラインは14ft、4.2mとなろう。仮に14ftを前提に話を進めると、当然メリットは
・並継で圧倒的に細身、磯竿より短いので風に強い
・モーメントが小さく持ち重りしにくい
・竿が短い分大物とのパワーファイトで有利
・操作性が良い
デメリットは
・ハエ根や瀬際の根をかわしにくい
・足場が高いと穂先が水面から離れやすいため風による糸ふけが出やすい
・極細糸で魚をいなすやりとりには不向き(こういったやり取りは軟調子の長竿が向く)
好みの分かれる点としては
・穂先は最も繊細なヨーロッパスタイルでもチューブラーで一般的な磯竿よりは太い
・北米スタイルはガイドが磯竿よりも大きく穂先も2~3号程度の磯竿と同等程度の太さがある
といった形になる。
とりわけ北米スタイルは「胴調子、軟調子」のためチヌ釣りには面白いかもしれないがグレ釣りには不向きだろう。
ヨーロッパスタイルは、先調子でガイドも小さく、グレ釣りの磯竿を短くしたようなものも多いが、ややパワーに欠ける。対象魚が中型以下のコイ科の魚で、止水での釣りのためやむをえまい。
そこでフロータニアのような先調子だが十分にサケマスと渡り合えるパワーロッドが、最も磯でのウキフカセには適しているといえる。この手のロッドの類似系としてヨーロッパメーカーでもカープロッドとの中間スタイルのような「パワーフロートロッド」や、欧州版「トラウトロッド」の一部があるが、数は少ない。
並継の魅力
おそらくトーナメントなどでフロートロッドをウキフカセに使おうという人はまずいないだろう。単に効率面で見れば、専用の磯竿に分があるに決まっている。それでもフロートロッドで釣る意味とは、その釣り味、やり取りの楽しさにある。競技以外では、釣りは魚を「効率的に」釣ることではなく「愉しく」釣ることに重点が置かれるべきだ。フロートロッドと日本の磯竿の最大の違いは、並継か振出か、ということ。携行性や現場でのセットに手間がかかるなどの問題はあるものの、並継竿は並継竿にしかなしえない釣趣がある。ヘラ竿などでも並継と振出では全く釣り味が違う。並継はまた、その構造上バット部分を肉厚・細身にしやすい。結果的に、振り出し竿よりも圧倒的に元径を細くでき、その割にパワーを出すことができる。根元まで曲げこむ快感は、並継竿にしか出せないものだ。また、風の抵抗を受けにくく、操作性も格段に向上する。


ルアーなどにすぐに移行できる
最近でこそ磯竿でシーバスゲーム、などといったことが行われるようになってきたが、フロートロッドは明らかに通常の磯竿よりもルアーゲームに向いている。ソリッド穂先の磯竿などは重量物を投げられないが、フロートロッドはほぼすべてチューブラー穂先。特にフロータニアのようなパワーフロートロッドは最適である。
フロートロッドでのウキフカセ、注意点
【やり取り】
物理的に竿が短いため、細糸でじんわりいなすというよりもやや太めの糸を使いその操作性を生かした機敏なやり取り、また根元まで曲げこんでのパワーファイトのほうが向いている。また際やハエ根には特に注意し、できるだけ沖でやり取りするか、早々に浮かせて足元に寄せるようにする。
【穂先について】
穂先が磯竿でいえば大物用や遠投用磯竿のチューブラー穂先に匹敵するパワーのチューブラー穂先となるため、ウキであたりを取る釣りや本流など遠距離での感度は良いが、繊細な釣りでの食い込みは劣る。自分の釣りスタイルに照らし合わせて、向き不向きを考慮するとよいだろう。なお、この強い穂先があるからこそソリッドではとらえにくいアタリを早く出すことも可能になる。ルアーゲームにもそのまま移行できるのであるし、ちょい投げなどにも流用できる。
センターピンリールのメリット、デメリット
センターピンリールをウキフカセで使っている人はほとんどいないだろうが、実際やってみると意外とこの釣りに向いていることに気づかれるだろう。
メリット
・放っておいてもスプールの負荷で自然と「張り」が生まれエサ先行が実現できる。
・寄せ波、引き波に合わせてラインスラックをいつでも片手で出し入れでき、ラインが風や波にとられにくい。
・軽量仕掛けでもwallis castなら問題なくキャストできトラブルも少ない
・人力ドラグはレバーブレーキ同様ラインの出し入れが自在
・やり取りは忙しくなるが楽しくなる
デメリット
・巻取り量がスピニングの約1/3のため、根に走る魚に追いつけない、手前に走る魚に追いつけないことが起こ得る
・遠投しにくい、特に30mなどは大きなウキでBCスイングをしない限り難しい
このリール、さすがに下流域のトロッティングが起源なだけあって、潮流に自然に乗せて流すには実に理にかなったリールである。スピニングでオープンベールで流していても、ちょっとラインを巻き取りたいときにはベールを返す必要があるためついついおろそかになったり竿の操作で間に合わせたりするが、このリールだといつでもラインを出し入れできるので常に完璧なラインスラックの状態をキープできる。その楽さは比べ物にならない。実は海でセンターピンを用いる場合、手持ちの泳がせ釣りと並んで最も適していると思えるのがこのウキフカセ釣りなのである。


巻取り量の少なさが課題
一方、最大の欠点は巻取り量の少なさ。これにより特に根に走られたり手前に走られると厳しい状況になりやすい。これをカバーするためには、とにかく必死に巻くしかない。スピニングの3倍の速度で巻く必要がある。さすがにこれは難しいので、これをカバーするやり取りを考えないといけない。
具体的には、まずラインは絶対に出さない。出せば出すほど巻き取る場面が増えるからだ。
これは川でのフロートフィッシングでもそうだが、センターピンはレバーブレーキ同様、ラインを出して走らせるのではなく、どうしようもなくラインが切れそうなときに限りラインを小出しにするものと考えるべき。
次に、ドリフト、アワセの段階から無駄な糸ふけは決して出しておかないこと。最初から糸ふけが大きいと合わせの段階でもラインを巻き取る必要が出てくる。もっとも、センターピンは前述の通りラインメンディングは得意なのでここは問題になりにくいだろう。
さらに、常に竿を立て少しでも巻き取り量をカバーする。
そして、このリールは巻取り量が少ないということは裏を返せば1:1の超ローギアであり、ごり巻きしやすいということである。よって、よほど魚が走っていない限り常に「巻く」ことを意識し、少しでもラインを回収していくということが大切だ。
一方、深場狙いですぐに底を切らないといけないケース、沖のポイントで巻取り量が多くなるケース、根がきついケースなどではレバーブレーキ付きスピニングのほうが無難だ。センターピンでは高速巻取りばかりに集中しなければいけなくなるため本来のやり取りを楽しめなくなる。こういった場面では素直にスピニングを用いるほうが賢明だろう。
手前に走る魚に注意
手前に走る魚はこのリールの最大の敵だ。巻取りが追いつかず根に潜られる、ラインにゆるみが出て針が外れる、といったことが起こりうる。沖である程度浮かせた、と思っても、手前に走られれば底の根に到達するだけのラインは十分に出てしまっているわけであるから、手前で十分に浮かせない限り気を抜いてはいけない。
どれだけ早く巻いても巻取り量が30㎝そこそこのため、スピードのある魚には負けることも多いだろう。通常魚が手前に来れば竿はやや下げてやるのがセオリーだが、このリールの場合は少しでも巻取りのスピードをカバーするために手前でも立て竿気味にしてひたすらごり巻きするのが良い。十分に竿の反発を魚に伝え、上方向のベクトルを生み出すようにする。
本来は渚釣りなどに適したリール
以上のようにセンターピンリールは巻取り量の少なさから根のきつい磯ではかなり厳しいケースもある。もともとこのリールはオープンスペースの多い川釣り用であるため、海では渚釣りなどで最も楽しくやり取りできるものと思う。ただ決して磯で使えないというわけではない。ヒットに至るまでのドリフトを大変容易にしてくれるのは大きなメリットだ。単純にやり取りだけ見ればレバーブレーキのスピニングリールに軍配が上がるだろうが、その他のメリット、またこのリールの持つ独特の魅力を鑑み、自身のフィールドへの適応を検討しあえて選択するのも面白いだろう。
