本流竿での魚とのやりとり、取り込み

 本流竿の醍醐味はやはり、魚とのやり取りにあると言ってよいでしょう。延べ竿一本で大物と渡り合う楽しさは、他の釣りでは決して味わうことのできないものです。しかし実際、いざ大物をかけてみるとラインブレイクや竿をへし折られたりといった不安がよぎるのもまた、延べ竿一本釣りの難しいところです。

竿を曲げる、とは?

 竿を曲げる本当の意味とは何でしょうか?竿は、曲げるものであって曲がるものではないということを、まず第一に考えなければなりません。「曲げる」と「曲がる」では大違いです。前者は意図的であり、後者は結果論での表現となっています。

魚が走りだして竿が「曲がる」というのは、よくあることです。リール竿であれば糸を送り出してやればよほど根が多い場所で無い限りこのような後手の対応でも致命傷にはなりません。しかしリールの無い本流竿では、魚が走りだして結果として竿が曲がった、という状況は、負けに近づいたということを意味します。

その意味は主に2つあります。1つは、そもそも魚に走りだす猶予を与えてしまったということ。車でも同じですが、一旦走りだしたものを止めることは難しく、もっともよいのはそもそも走らせないということです。一度加速がつくと魚はどんどん走って行くことになり、リールの無い本流竿では対応できず、足で付いて行くしか方法は無くなります。これは非常に場所を選ぶ方法となり、負けの可能性が高くなります。

もうひとつは、自分から竿を曲げたのではないのでこちら側の意図した曲がり方になっていないということです。つまり、曲がる方向や、曲がりの度合いなどが、全て魚が走った結果論になっているということです。主導権が魚にあり、こちら側はそれについて行っている状況だということです。

本流竿でのやり取り
鮭の延べ竿での釣り

常に先手を取って曲げこむ

 本来、竿をいつ、どのように曲げるのかというのは、常にこちら側の支配下にあるべき問題であり、常に魚の先手を行かなければなりません。したがって、魚がかかれば、まずこちらから竿を曲げにかかる、ということが大切です。

これは大合わせの結果としてそのまま竿を曲げこむというのではありません。合わせは合わせとして行い、そのあとにすかさず竿を曲げにかかるということです。これは一見勇気のいる行動です。というのも、曲げこんだはいいが、それでもそこから魚がぐいぐいと走りだしたら竿は既に曲がりきっているからどうしたらいいものか、と考えられるからです。このように考える人は、曲げの余裕を見越して、あまり最初から曲げに行こうとしません。しかし、中途半端な曲げこみでは十分なテンションが相手に伝わらず、結果として走りだす猶予を与えてしまうことになりかねません。

ですから掛けたらまず思いっきり曲げこむ、ということを行って下さい。これでも走りだす魚は、曲げこまなければ更に走りだしていずれにしても手に負えません。しかし、最初に曲げこんでおいたならば、まだ自分が少し手前に出るとか、曲げを緩めてやる等、対応の仕方があります。最初に曲げこむことは勇気が要ることですが、それは前もってこちら側が有利に立つことで、それでも抵抗された場合に譲歩できる余地を作るということでもあります。

もちろん、曲げ込みの前にはしっかりとした合わせが必要になります。魚の種類によっては向こうアワセで良い場合もありますが、多くの大型魚は口が硬く、延べ竿での釣りはブッコミ釣り等とは異なり手持ちでアワセに行くためしっかりと合わせてやる必要があります。

本流竿は長い為、竿尻を少しつきだすだけで竿先はかなり動き、しっかり合わせられます。しかし、竿自体が長く慣性がある為パワーがないとアワセが緩慢になりがちでもあります。どんな魚種にしろ、アワセは鋭く行うのが基本です。口切れを防ぐために緩く行う合わせというのはあっても、ゆっくり行う合わせというのはあまり無いはずです。スピードは、素早く一瞬で行うのがアワセの基本です。

本来、延べ竿ではどうせ掛かった後に限界まで竿を曲げ込むのだからそこで針が食い込んでいくだろうと思われるかもしれません。実際そういう魚種もあるでしょうが、そうでない魚種もあります。アワセをしっかりしないと針先だけがかかり魚が向きを変えたり首を振ったりした瞬間にあっけなく外れるパターンもあります。アングラーとしてはあれだけ曲げ込んだ後になぜ外れるのかと思う事もあるでしょうが、意外と針先は持続的な力だけでは奥まで食い込んでいないことも多いものです。

トンカチで釘を打つ時もそうですが、じんわりと大きな力をかけるよりも一瞬でストンと力をかける方が効率的です。アワセも同様で、一瞬に力を集中させることに意義があります。従って必ず曲げ込みの前に一度鋭く合わせます。鋭くというのは大合わせではありません。力よりもスピードです。

しっかり合わせると口切れが心配とかラインやロッドが破損しそうとか考える方もいらっしゃるかもしれませんが、「鋭く」を意識すればそのようなことはまずないでしょう。大きくではなく、鋭く、なのです。サケなどでは2度アワセすることもあります。一度に大アワセするよりも、鋭いアワセを2回する方が効果的でデメリットが少ないのです。

なお、アワセをするタイミングは基本的にかならず「最初だけ」です。やり取りの途中に「やっぱりアワセが足りなかったかな」と追いアワセすることがあるかもしれませんが、延べ竿での釣りではこれはあまり適切ではありません。基本的に魚がパニックで未だ走り出していない最初の状況でのみアワセを行い、竿を曲げ込んでいる状態で無理にアワセをすることは物理的にも無理がありますし口切れやタックルの破損を招きます。リール竿ならばラインを少し出して調整したりもできますが、延べ竿ではそのような余裕はないでしょう。

流れとしては、アタリを感じたらすぐに鋭く合わせ、その後に曲げこむ、ということです。なお、曲げ込みの角度に関わらず、基本的にアワセの方向は「上方向」です。

まれに流し終わりでいきなり魚がかかりそのまま走りだし合わせる余裕がない場合があります。このような場合は足を使って竿の角度を作ってから出来るだけ早くアワセます。竿とラインが伸び切った状態で合わせるとアワセが効かないばかりかライン切れのもとですので、必ず足を使って角度を作るようにしましょう。

譲歩の仕方

 先手を打って曲げこんでも、それをものともせず竿をのしにかかる大物もいます。このような場合は如何に対応すべきでしょうか。ここでの譲歩の仕方は2つ考えられます。1つは、自分の足を使い前に出ること。もう1つは、竿の曲げを緩めること。

もちろん、動ける場所ならば自分の足を使うことをまず選択すべきです。その際は、竿の角度は変えずに曲げこんだままにすること、そして、一気に前に出ず にじりじりと譲歩することです。一気に出ると魚に走りだすチャンスを与えてしまいます。綱引きと同じようなものです。

動けない場所ならば、曲げを緩めるしかありません。しかしこれをすることは殆ど崖っぷちにいるようなものです。竿がのされ、ラインにテンションが直接か かり始めるとラインブレイクです。もちろん、かといって無理をしすぎて曲げを緩めなければ竿を折られることになるので、ここは徐々に曲げを緩めるしかあり ません。しかしこれは最後の手段であるということです。簡単に曲げを緩めるようではなかなか大物を上げることは出来ないでしょう。

鮭の延べ竿での釣り
鮭の延べ竿での釣り

竿は立てるのか寝かせるのか

 竿を曲げる時に、一般的にはまっすぐ竿を立てて曲げる方法と、45度程度竿を寝かせて曲げる方法があります。しばしば後者が雑誌等では紹介されますが、竿の角度はなかなか興味深い問題です。

単純に考えて、思いっきり、それこそメーターを越えるような大魚と格闘するならば、竿はまっすぐ立てて全身を竿に掛けていく方法を取らざるを得ないのではないでしょうか。竿を斜めにすると、竿を持ってやってみれば分かりますが、どうしても腕力に頼ることになります。まっすぐ竿を立ててグリップエンドを下腹に当ててまるでトローリングの格闘のようなスタイルにすれば、全身で耐えることが出来ます。したがって、このような超大物領域でのやりとりには、竿はまっすぐ立てて行かざるを得ないということになります。

しかし現実問題として、このような領域のやりとりが求められるのはキングサーモンくらいではないでしょうか。通常の本流竿でここまでの格闘を求められる のはなかなかないことです。そして、通常の釣りでは、グリップエンドを押し込んで曲げこんでいくのであって、これを下腹に当てながら全体重で耐えるような スタイルは、確かに鮭の「応援団釣法」では見られますが、必ずしも一般的ではありません。

グリップエンドを押し込んで曲げていくならば、竿は必ずしもまっすぐ立てていなくとも任意の角度を付けることが出来ます。そして、しばしばその角度が上流側45度だったりするわけです。

なぜわざわざ竿を寝かせるのか。竿をまっすぐ立てると、魚は上方向、そして手前方向に引っ張られます。すると魚はこれに抵抗して下方向、いや、下は本流釣りの多くの場合それほど水深が無いので沖方向に走ろうとします。これは出来れば避けたいことです。沖へ走られると自分の足で付いて行くことが出来ませ ん。さらに、竿を立てていると、逆に魚が浮いて来た時、魚が流れの強い水面近くまで浮きすぎて、流れに乗って流されてしまうことも考えられます。できれば、手前までは水流の弱い中~低層でやりとして、最後に浮かせるのが得策です。

だとすると、竿を或る程度寝かせることが有効になります。ここで或る程度としたのは、完全に水面に平行なほどに寝かせると、針へのテンションに不具合が 生じばらしの原因にもなると言われているためです。そして、寝かせる方向ですが、基本的には上流側へ寝かせます。下流に寝かせればそのまま魚が流れに乗じて走って行ったらどうしようもありません。

このように竿を或る程度寝かしておくと、魚にかかるテンションは左右になり、例え走りだそうとしてもその逆、つまりこれもまた左右となり、自分の足で付いていきやすくなります。

ただし、他の考え方によるやり取りも可能です。例えば、竿を完全に寝かせてやり取りする方法です。

水深が極めて浅い瀬などでは、上方向の引っ張りは魚体の大きさによっては無理が生じることがあります。極端な例ですが、50cm水深の場所で80cmの魚を上方向に完全に引っ張れば魚の頭は水面から出すことになり、これは浮力を使えないので非常な力が必要です。これは机上の極論としても、浅場では魚は上方向に引っ張ることは無駄が多いものです。無駄なだけならばいいのですが、必要以上に力がかかり魚体の重みで口切れをしたりバラシの原因となることもあります。これを防ぎ効率的に魚を寄せる為に、竿を水面と平行、つまり完全に寝かせる方法もあります。

竿を完全に寝かせると針の角度によってはバラシの原因になると先に書きましたが、しっかりかかった針はそうそう抜けません。魚の口の形状にもよりますが、上方向に引っ張っていれば針が一度外れてもまた掛かる可能性がありますが横方向では吐き出されて終わりということが考えられますが、実際にそのようなことが起こるのかは分かりません。

それよりもむしろ完全に寝かせたやり取りにはバラシを防ぐ側面もあります。理由は、まず一つ目は最も効率的に魚を寄せる力を伝達できるため寄せが早いこと、上方向のやり取りでは魚の口を介し針と糸がテコのように働き針が外れると思われるケースがありますが完全な横方向ではこれは起きにくいこと(掛かり場所によっては原理上起こらなくはないが上方向よりは可能性が低い…寄せの力伝達が大きいため)等が挙げられます。

完全に寝かせるやり取りでは、アワセは必ずしっかり上方向(これはどんな場面でも殆ど一緒)に行い、その後すぐに竿を寝かせます。後半になってからは竿を立てて魚に空気を吸わせ弱らせます。竿を寝かせるやり取りでは魚は意外と早く寄ってきます(力伝達が大きい為)が、一方で空気を吸っていないので体力が残っていることが多いです。従って竿を立てて又走れば再び竿を寝かせて寄せ、また竿を立てて…を繰り返す事です。当然ですがずっと竿を寝かせていれば魚を最後まで寄せるのは困難です。どのタイミングで竿を立てに入るのかは、好みですが基本的には魚がある程度弱ってからが良いでしょう。元気なうちに立てればそれまで竿を寝かせていた意味があまりなくなります。

寝かせるやり取りで超大物を狙うのは、体勢的に困難な部分もありますが、工夫次第では意外と寄せを効率的に行え効果的な場合もあります。一方で、例えば水深が数メートルもあるような場所では竿を完全に寝かせることはあまり適していないでしょう。水深、立ちこみの程度、スタンス、これらから自ずから或る程度ベストな竿の角度は決まって来ます。極端な深場で足場が高い場合は竿を下に向けることも適切な場合もあります。ポイントは、どうすれば魚に最も効率的に寄せの力を伝達できるかを考えることとなります。

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